053 南アフリカは恐いところか

アジスアベバ（エチオピア）を発って約7時間。もう外はすっかり暗くなっている。飛行機がだんだん高度を下げ始め、ジョハネスバーグの夜景が見えてくる。オレンジ色が多い。東京も含め先進国の光は白が基調でもっとカラフルだ。光はところにより碁盤の目になっていたり、かなり広い面積で真っ暗なところもある。そんな風景を見ながら自分の中の緊張が高まっていくのを感じる。途中ルサカ (ザンビア）、ハラレ（ウガンダ）で降りる度に黒人が減り、白人が増えたような気がする。ジョハネスバーグ到着は1時間近く遅れて20時近く。危険といわれるところに暗くなってから着くのはあまり気分の良いものじゃない・・・

旅行前、南アフリカ*1についての僕らのイメージはかなりネガティブなものでした。エチオピアのネガティブな特徴が「貧困」だとすれば、南アフリカのそれは「敵意」ではないかと思っていたくらい。というのもガイドブックには「ジョハネスバーグは世界で最も治安の悪いところ」とあります。「南アフリカに行く」と話すと誰もが「だいじょうぶ？　気をつけてね、治安がとても悪いって言うから」と言います。事前の調査から知ったこともアパルトヘイトによる長年の傷（ネルソン・マンデラが釈放されたのは90年、最初の全人種総選挙が行われたのは94年とつい最近のことです）、大きな貧富の差*・・原因はいろいろ考えられますが、いずれにせよ鋭い視線の向こうに敵意が渦巻くところというイメージを拭い去れず、それでもあえて行くのは「見ておかねばならないものを見にいく」というのが理由でした。ただどこかに、民主化や平等に向けて戦ってきたこの国は実はとても熱いところなんじゃないか、という期待もありました。

■「信用しない」モードからスタートして

さて、空港に降り立った僕らは「向こうから話し掛けてくるものは誰も信用しない、相手にしない」というモードに入っていました。しかし空港のインフォメーションでは、「時間が遅くてシャトルバスはもうあまりないから、そこの人（僕らに声をかけてきていたタクシーの運転手）に連れて行ってもらったらどうか」と言われます。「サントンまでいくら？」と聞いて返って来た「190」という返事に girl friendは「高い。ガイドブックには140と書いてあった」と鋭く切り返します。「それはしばらく前の話で物価は上がっているのです」と言う説明を聞いてちょっと考え、一応、信用することにしてこのタクシーに乗ります。

車はベンツ。特にエチオピアで年代ものの車を見慣れていた僕らからすると「おー！」という感じです。メーターもついています。すばらしくきれいな道路(アパルトヘイト時代は白人が利用するものに集中して金を使えたとか）を時速120キロで滑るように走る中、girl friendが運転手と会話をはじめます。「ジョハネスバーグはとても危険なところだと聞くのだけど、どうなんですか？」「そんな、とんでもないデマですよ」会話は彼の家族の話から好きな食べ物の話などへ移っていきます。

ホテルはサントンというジョハネスバーグ郊外の「安全地帯」エリアにあるホリディイン・クラウンプラザ。安全を考えてこのクラスにしたのですが、かなりきれいでしかも安い（南アの物価感覚は日本の三分の一から半額と言う感じです）。時間が遅かったので外に出るのをやめ、人気があるというホテル内のタイ料理レストランに行きます。「ご存知のようにバレンタインデーでいっぱいなんです」と言われて「そういう平和な習慣もあるのね」とちょっとほっとします。「予約で一杯ですが来ない方も時々おられますから30分したらもう一度いらしてみてください」と言われて30分後に行ってみると、今度は入れました。

「バレンタインおめでとう」と花をgirl friendにもらってまた笑顔。安全という点ではホテルを信用していたのですが、都会の冷たさやコマーシャリズムの悪い面もありそうだよな、と思っていたので、「そうでもないかな」と少し傾きます。料理自体は人気ほどおいしいとは思わなかったけれども、そこそこ満足して食事を終え、なんとなくちょっと疲れた感じで部屋に戻ります。

■道をさがしながらオフィスに行くのは危険？

翌日の朝、ここ1ヶ月、連絡がつかなかった人と電話がつながります。JVC（日本国際ボランティア協会）の津山直子さんという人で、日本の南アフリカ大使館でも「その人にコンタクトが取れているのならジョハネスバーグについては十分でしょう」と言われた人です。連絡がつかなかったのは電話もメールもないところに出張していたため。そして以前に聞いていた通り、JVCの元職員のガイドと彼の家でのホームステイ付でソウェト*2に行けることがわかります。ひょっとすると自分たちで動くしかないかなと思っていたので一安心。結局、ジョハネスバーグ滞在中は津山さんに大変、お世話になります*3。

しかし待ち合わせの場所を決めるところで改めてジョハネスバーグの治安について考えさせられることになります。なんらかの方法で僕らはレンタカー（ガイドの車の調子が悪いということで僕らがレンタカーを借りた）でJVCのオフィスまで行かなければならないのですが、道を探しながら走っていくのは危険だから、途中の安全なところで待ち合わせた方がよいというのです。実際、JVCのオフィスのあたりは外務省から「注意喚起」が発出されているエリアに含まれます。結局、町に入る手前のマクドナルドで待ち合わせることになります。

そして無事、ガイドをしてくれるバンボという青年と会い、JVCのオフィスに向かう道は、やはり途中から「ちょっと違う」感じがしました。使われていない様子の建物が増える、落書きがいろいろ、ぼろのような格好をした人がうろうろしている等。JVCの入っているビルの地下駐車場に入っていくところにも「自己の責任においてとめてください」とあります。こんなことは日本でも書いてあるんですが、こちらで見ると何か突き刺さる感じがします。

しかし、建物の中に入ればそこはごく普通のオフィスで、JVCの人たちの感じも明るいもの。話してみてわかったのは、危険といわれる地域でも人（＝危険人物でない人）は生活していること、しかしやはりいろいろなことは起きていて、日本よりははるかにみんな注意をしているということでした。

■旧黒人居住区ソウェトで実際に見たもの

そしてしばらく話した後、バンボのガイドのもとソウェトに出かけます。途中、エチオピア同様庶民の足となっているミニバスについてバンボがコメントします。彼らの運転があまりに荒っぽいので一般車とは分ける道路ができたこと、いっしょに走る際は近寄らないようにしていること・・。人を何人も乗せていて、しかも商売道具のはずの車がそれほどまで荒っぽいのは車や客へのダメージよりも売上を稼ぐことに頭が行っているということなのでしょうか。うーん、よくわからない。

そんな話をしながら高速を20分くらい走るとソウェトに入ってきます。第一印象。「すごい」という印象はありません。まず貧困度ではアジスアベバの方がぼろくてスラム的に見えます。また、何人か出会った友人にバンボがあいさつする様子も、そのあたりにいる人（そのあたりに人がくつろいでいる）も、特に緊張感はなく、むしろ、ほんわかした感じがあります。日本でいえば夏の夕方の近くの公園という感じ。ソウェト＝エチオピアで見たようなバラックの群れというイメージがあったので、それ以外のソウェトもたくさんあることに*4気がついたのでした。さらに言えばソウェトの中には東京でならば「豪邸」にあたるような家もいくつもあります。実は考えてみればそういう情報も来る前に読んだ中にあったのでした。でもこの瞬間まではどこかにふっとんでいた、というのは人間の記憶の一つの特徴かもしれません。

■バンボの家族と話して－南アフリカはよくなっているのか？

そしてバンボの家に着いて両親と話を始めます。僕らの自己紹介と今回の旅の目的を話していたら、その途中から早くも今回の一つの関心事に話が飛んでいきます。アパルトヘイト後、平等になったのか？　今は失業しているというバンボのお父さんによれば、かなり平等になってきているということです。この発言は正直言ってちょっと驚きでした。不公平に扱われていた側が「よくなった」と認めることはなかなかない、というのが僕の感覚にあったからです。ただし司法は黒人の司法関係者がまだ育っていないこともあって不公平が見られると。また富を隠し持って海外へ逃げてしまっている白人がいる、という話も出てきましたが、強い感情や敵意が表に出ることはありませんでした。

バンボのお母さんと話している中でひとつ気になったのは、国外から入ってくる人々が麻薬を持ち込むなどして治安を悪くしているというところです。それが事実なのかそうでないのかはわかりませんが、外国人が問題の原因であるというのは日本でもよく聞く話です。でも、それが本当だとしてどうして外国人が悪いことをするんだろう？　もし本当ではないとしたらどうしてそう言われるのだろう？日本ならともかく、南アフリカでは特に黒人なら、ぱっと見ただけではわからないような気がします。いずれにせよ、暴力や敵意、恐怖につながるところとして気になりました。

その後、おかあさんの足の調子が悪く料理が出来ないのでバンボとバンボの友達のツァッポといっしょに外に食事に行きます。最初に食堂、次にやや年配の人が集まる飲み屋、そして若者が集まるちょっとトレンディなバーと、はしごしますが、どこでも敵意を感じるということはなく、むしろ楽しそうでフレンドリーな印象を受けます。疲れた感じがないだけ、日本のビジネスマン・ビジネスウーマンよりも明るいかもしれない。そして僕らに付き合っているバンボにしてもツァッポにしても若いながらかなりよく考えており、かつ純粋な好奇心を示すのでビジネス、キャリア、社会といろいろと話が進みます。ちなみにバンボは20歳で今は JVCでアルバイトをしながら通信教育でアカウンティングを勉強しています。ツァッポは23歳で仕事をしながらパートタイムで経済学の勉強をしています。

つまりここまでのところで僕らは、暴力も敵意も受けたり感じたりすることはなかったのでした。ただ、昼間も夜も、ソウェトではほとんど白人には会いませんでした（夜、トレンディなバーには数人来ていましたが）。

■朝からビン・ラディン

翌朝、起きてリビングに行くとバンボのお父さんがいて、いつの間にか国際政治の話になりました（朝から重たい）。彼はアメリカのアフガニスタン空爆や中東での政策に対して批判的です。「ものごとの一面だけを見ているのがおかしい」「アメリカのやり方はアラファトが仕事を出来ないようにしている」そして、「911でアメリカが目を覚ますべきだ」「もしオサマ・ビン・ラディンがうちに来たらかくまってやる」。しかし、もちろん彼はテロを肯定しているわけではありません。

これに対して僕が言ったのは、911のようなやり方はアメリカの目を覚ますためによかったとは思えないということでした。アメリカ人の中に愛国心や怒りを起こしたとしても、反省を起こすのに効果的だったとは思えない、現にアフガニスタンへの空爆やさらなる攻撃への動きを起こしてしまっていると。

この時はそこで時間切れになり、その後も日曜の朝のミサや僕らの外出で続きを話す機会を逸してしまって「もっといろいろ話したかったし、話を聞きたかったんだが」と別れる時に彼は言っていました。これは僕も同意見でとても残念。ただ後でふと思ったのは、実は南アフリカの歴史こそ暴力や武力の限界を物語っていると言えるかもしれないということです。結局、自由と平等を勝ち取ったのは、黒人たちが武力で勝ったからではなく、不屈の非暴力運動の広がりと外からの経済制裁によるプレッシャーが大きかったからだと思います。むしろその途中でいろいろ起きた暴力（たとえば黒人内での立場の違いによる戦い）はアパルトヘイトを維持すべき根拠として使われていました。

しかしあとで「ビン・ラディンがうちにきたら・・」という話を何人かの在南アフリカ邦人にしたところ一様に、南アフリカではそういう意見は多いだろう、という返事が返ってきました。実はエチオピアでもビン・ラディン同情派は少なくないという話を聞いていました。事態が緊張してくると、このような感覚がアメリカ関係機関への攻撃や他者による攻撃の容認につながるのかもしれません。特に南アフリカやアフガニスタンのように修羅場をくぐりぬけてきたところでは。

■排他する結束とオープンなコミュニティ

と、ちょっと暴力や敵意寄りの話の後はバンボ手作りの分解した(^_^)目玉焼き付き朝食を食べ、年齢よりも若く見えるgirl friendはバンボのお母さんに「もっと食べなきゃそんなんじゃおなかがすいてしまう」とシリアルを食べるように強く言われます。どこの国もお母さんというのは似ている(^_^)?

そしてまたバンボと出かけて行きます。まずジョハネスバーグに出かけた時はやはり緊張しましたが、おそらく危険なところにはバンボが連れて行かなかったのでしょう、特に違和感すら感じることもなく戻ってきます。そしてソウェトに戻る道すがら、インド人が多いというエリアのショッピングモールを見にきたところで興味深いことをバンボが口にします。

「インド人は結束が固い。ただ、問題は他の人たちと分け合おうとしないこと」日本でいえば学閥や企業に対する帰属意識というところでしょうか。中から見れば美しかったり頼もしかったりするネットワークが外から見るとアンフェアだったり排他的だったりする（実際にどうかは別として）ことがよくあります。ここにも一つの争いの芽があるのかもしれません。また、ショッピング・モール内で数多く見かけたインド人のちょっと神経質そうだったり、すまして見えたり、頭がよさそうに見える顔を見ていると、よけいにそういう感じがするのでした（全くの偏見なのですが、そこのインド人にはよく学園ドラマに出てくる勉強にしか関心のないガリ勉君にそっくりなふちの細いめがね顔を多く見かけるのです。ちなみにアフリカ人にめがねは少ない。特に若者はみんな健康優良児に見えます）

そんなことを思いながらソウェトに戻ってくると、なんかちょっと安心するような気がします。もちろんソウェトでもいろいろなことで結束した歴史がありました。しかし僕の印象ではその中に排他的な動きはありません。そしてその感覚はモールで合流したツァッポの行動でさらに増進されます。「生活を見たり、人と話したいんですよね。その辺のうちの人に見せてもらいましょう」と彼は言いだします「うそでしょ」という僕らに対して「ホント、ホント」と言いながらツァッポは車を降り、ちょうどそこで外に出ていた家の人に話し掛けます。そしてその人は別に知り合いでもなんでもないのに家の中を見せてくれました。これも一軒ではありません。こうなってくると、日本とどちらが治安がいいんだろうと、わからなくなってきます。そもそも治安って何だろう？

その数日、ソウェトで見た風景は、何か自分が30年前に東京でも見ていた懐かしい風景を見ているようでした。週末や夕方になるとたくさんの人が外に出て遊んだり、話したりしている。たくさんのこどもたちが道で遊んでいて、道を聞けばみんなでよってたかって教えてくれる（みんな○○さんがどこに住んでいるか知っている。うまく表現できなくててんでばらばらなことを言うのは愛嬌ですが）。政府が新しい住宅をつくって、これまでのぼろ屋から移れることになっても移りたがらない人が多い、というのは何度も聞いた話です。

■イメージによる恐怖

この話をケープタウンで滞在したゲストハウス（日本でいうペンション）のオーナー夫婦（白人－おそらく僕らと同年代）にしたら、奥さんから「うらやましい」と言われました。彼女は自分をとてもかわいがってくれた黒人の乳母の人を車でタウンシップまで送っていったことがあって、行くまでは何も思っていなかったのだけど、行ってみたらすごく恐怖心を感じたというのです。おりしもその頃アメリカ人の女性がタウンシップでひどい目にあうという事件があったそうで、それが頭をよぎったと言っていました。僕らにはそういう先入観がない、また白人ではないから恐れずにタウンシップに入っていけるのがうらやましい、というのです。確かに南アフリカの歴史の当事者でない僕らの方が気楽かもしれません。アパルトヘイトはなくなっても、見えない線が引かれているのかもしれません。

この恐怖感については後にケープタウンで訪れたあるNGOで働く白人女性も触れていました。そのNGOでは西ケープの小中学校をインターネットでつなぐことで IT活用と子供の交流を促進しようとしています。ネット上のみならず実際に近くにあるお互いの学校（かたや黒人ばかり、かたや白人ばかり）に行って授業を受けることが行われています。これにより「あの通りの向こうは危ないから近づいてはいけない」と思っていた白人の中にも少し変化が起きていると言うのです。もちろんその道のりもなだらかではないのでしょう。

■敵意を伴わない前向きさ

しかし道はなだらかでないにしても僕がよいなあと思ったのは、僕らが会った多くの人が前向きな姿勢、それも敵意を伴わない前向きな姿勢を持っていたことでした。自分ならずっと不平等な扱いを受けてきて、あるところから平等になったからと敵対心を消せるだろうか、しかも、アパルトヘイト廃絶の運動にあたっては相当な弾圧があり、たくさんの人も死にました。

でも、「成功の秘訣は何だと思う？」という僕の質問に対して「意志だと思う」と答えたバンボも、バンボの両親も、ケープタウンで訪問したいくつものNGOの担当者たちも、南アフリカ初の黒人によるワイナリーとしてウォール・ストリート・ジャーナル一面に載ったNew Beginningsの担当者も、自分たちが取り組んでいることを成功させようという意志は強く感じられても、敵意は感じられなかった。きっと、いろいろな思いはあると思います。でも、それを前面に出してはいなかった。これは前に進むために重要なことだと思うのです。

一方で、前述のゲストハウスのオーナー（だんなの方。本業は弁護士）は「この国のインフラは一時的に悪化するだろう。これまでやらずに来ていたことで、やらなければならないことがたくさんあるから。それは仕方がない」と言っていました。この冷静さをどれだけの人が持てるかどうかは、一つの重要なポイントだと思います。こちらもおそらく非常に難しい。

■やはり犯罪ははびこっている・・・が・・・

このように前向きな人々に多く会えたことで、僕らの南アフリカに対するイメージは大きく変わりました。しかし、繰り返しになりますが、恐怖や警戒はやはり必要なのです。最終日に、僕らをホテルに送っていった後ではバスで帰るのは遅すぎるとバンボは友達に車で連れて帰ってもらう手配をしていました。ソウェトの中で夜になると赤信号は安全を確認できれば止まらなくてよいというのも、便利だからだけではないでしょう（止まっているのは別の意味で危険）。バンボの家（高級住宅ではありません）の塀の上には瓶を割ったガラスの破片が並べてありました。

ソウェトのようなコミュニティから外に出るともっとひどくなります。ケープタウンで僕らがレンタカーを借りた一つの理由は、歩いて食事に出かけるのは危険だからでした。車はイモビライザー他なんらかの盗難防止をしているのが普通で、ラジオのパネルははずせるようになっていて車を離れる時にははずしていきます。

これは人種に関係なく、金を持っていたり無防備に見えれば犯罪にあう危険性が高いということです。なぜこうなってしまうかというと、

犯罪など犯さない状態での生活レベルがあまりに低いので、
そして犯罪を犯したとしても捕まる可能性が低いので、
だったらやってしまえ

ということなのでしょう。南アフリカは暴力の歴史をずっと見てきたので、やる側にも暴力に対する心理的抵抗が少ないというのもあるのかもしれません。いずれにせよ非常に残念なことです。

しかし、そういう危険な面のある国であっても、この国は今回の滞在を通して僕にとって関わりあい続けたい国となりました。それはこの国に、上に少しずつ触れてきたあたたかさと前向きのエネルギーを感じるからです。特にこの後者については次回にまた触れたいと思います。この国の人たちは能動性という力を持っている。それをぜひ日本に「輸入」したいと思っています。

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*1 95年のデータですが、人口の1割強に過ぎない白人の所得が南アフリカ人の全所得の58.5パーセントを独占しているというのに、人口の8割近くを占めるアフリカ人（黒人）のシェアは29.3パーセントに過ぎません。また南アフリカの全住民の52.8%が貧困層（1ヶ月の消費支出が301ラント未満。96年で1ラント=25円）に属するとのこと。（峯陽一著　南アフリカ「虹の国」への歩み岩波新書から）

*2ソウェト：南アフリカ最大のタウンシップ（旧黒人居住区）

*3僕らは単にJVCにコンタクトを取っただけで行ったのですが、今回のようなケースは特殊で、本来はJVCの会員に対してのサポートだそうです。
JVC:http://www.jca.ax.apc.org/jvc/

*4 僕らはそれほど見なかったのですが、ソウェトでもバラックのようなエリアももちろんあります。そしてケープタウン周辺では今にも倒れたり吹き飛んだりしそうなバラック（スクワッターと呼ばれます）をたくさん見かけました。

Toshi/高橋俊之（たかはしとしゆき）。知恵市場代表。株式会社グロービス執行役員、グロービス・マネジメント・スクール統括責任者を経て、2001年7月からフリーランスとして活動。成長期の事業マネジメントを中心に外部からグロービスに関わる一方、「日本人のQuality of Life(QOL)アップ」をキーワードに知恵市場に続くプロジェクトをプロデュースしていく予定。著書・監修書に「テクノロジー・パワード・リーダーシップ」（ダイヤモンド）、「ビジネスリーダーへのキャリアを考える技術・つくる技術」（東洋経済新報社）。

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