132 頭痛とちゃんとつきあってみる

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コミトンの執筆は、僕とToshiさんで交代にやっているので、2週間ごとに担当号がやってきます。書くテーマが決まっている場合も多いのですが、ぎりぎりまで決まらないことも多い。今回も、これにしようかなというテーマもあるのですが、今ひとつ決め手に欠いていることもあって、悩みました。

このところ、ちょっと重たいテーマが続いている感じもあるので、少し軽めのテーマにしたいなあという思いもあって、何かいいものはないかなあと探したり。

そういうわけで、今回はちょっと唐突に健康についてです。なんだ、ちっとも軽くないじゃないかと思うかもしれませんが、それほど深刻な話ではありません、おつきあいください。

■僕は頭痛持ち

最近、仕事以外で、日常的な話題といえば、健康です。自分のこと、妻のこと、子どものこともありますが、両親の健康もあります。親と食事をすると、決まって出るのは健康の話題で、「○○は、××にいいんだって」「△△しないとだめなんだって」というような感じです。特に妻の母親は、放っておくとこの話題しか口にしない、というぐらいの健康オタクの状態です。

ネタの背景には、TV番組があります。「ためしてガッテン」「あるある大辞典」ほか、みのもんた系の番組など、各局、たくさん放送していることもあって、ネタには不足はないと言うところがあるのでしょう。

一方で、こういう話題にふれたくなる年齢でもあります。やはり「厄年」をすぎると少しずつ身体が変ります。少しずつトラブルが増えてくる。コミトンの読者の平均年齢を調べたことがないのでわかりませんが、厄年前の人にはピンとこないかもしれません（でも厄年というのは、身体や人生の変わり目、という意味があるみたいです）。よく話題の上るように感じるのは、僕が趣味も含めて、どこかでみんな仕事に絡めてしまっているせいもあります。田舎で楽しんでいることも、どこかで仕事とつなげてしまっているので、単純な趣味というのが存在していないのですね。仕事にまったく関わらない話題としてはどんなことを話しているのかなと思うと、健康が多くなる、というわけです。

では実際のところ、健康上のトラブルを抱えているのかというと、やはりあります。僕の場合、頭痛と腎臓結石というふたつの持病がそれです。腎臓結石は、発作的におこるし、ひどく痛いので、やっかいな病気なのですが、症状が出ることは少ないので、日常的には忘れています。直接的にやっかいなのは頭痛の方です。

頭痛持ちは20代の頃からなので、長年つきあっているのですが、以前は痛くなるとすぐ市販の頭痛薬を飲んでいました。薬はよく効くので、ちょっと痛くなるとすぐのみ、それで忘れてしまえたわけです。しかし、だんだん薬の副作用が気になるようになってきました。2年前に何度目かの腎臓結石が再発して、ひどい痛みの発作がやってきました。このときはそれまでになくひどくて、強い痛み止めの座薬を数時間おきにまる2日間使い続けでも症状がよくならず、死にそうな気分でした。ありがたいことに、「この病気で死ぬ人はいないよ」と専門医がいうような病なので、つらいのは痛みが出ているときだけで、いったん石が出てしまうなどすると、あまり尾を引くような病気ではありません。たちは悪くない、といえるかもしれません。

しかしこのときに大量の鎮痛剤を使ったことが身体にそうとう負担だったようで、いったん直ってのちに、1か月ぐらいして頭痛が起きたときいに、いつもの市販の頭痛薬を1錠飲んだところ、立っていられないほどふらふらになってしまいました。頭痛は治ったものの、薬が身体の負担になっている感じで、全身のだるさがとれないのです。「薬の負担がきつく出る身体になってしまった」という事実を認めざるを得ない経験でした。このときをきっかけに、気軽に薬を飲むのはやめようと誓ったのです。

しかし、この誓いを守ることがどれほど厳しいことか、その後の2年間でたっぷり味わうことになります。

■そもそも、頭痛の原因は？

薬を使わずに頭痛とつきあおうと決めてみると、頭痛という症状が思っていた以上にやっかいなものであることがわかりました。

まず、いつおこるかわからない。朝起きてみると頭が重くて、そのままひどくなって昼頃にはひどい頭痛、ということが多いのはわかっていたのですが、実際にいつ起きるのか、どのように起こるのか、そもそも頭痛とは「何が痛い」のかもわからないことに気がつきました。つまり原因がわからないのです。このあたりから、健康について真剣に考えるようになりました。

こうしてみてみると、健康番組とはありがたいもので、頭痛についてていねいに解説し、解消法を教えてくれる番組もあちこちでやっていることに気がつきます。目についたときに見るようにしてみると、だんだん原因がわかってきました。

頭痛にはふたつの原因があって、「緊張型」と「偏頭痛型」です。緊張型は、背中や肩から首筋、頭の筋肉が凝り固まって、老廃物が流せない血行不良の状態になり、痛みが出るというもので、肩こりとセットになっているものです。偏頭痛型は主に血管の収縮によって血行障害が起こり、細くなった血管に大量の血液が流れて血管の周囲が痛くなるというものです。僕の場合は、緊張型ベースで、ひどくなると偏頭痛型も入ってくることがわかりました。このふたつは頭蓋骨の外側で起こっている痛みで、これ以外に内側で起こるものもあります。脳腫瘍などで脳内に異物ができると、圧力が上がって痛みが出ます。しかしこの場合は痛みの質が違うようなので、自分でも除外できました。

こういう病気の情報は、テレビもありますが、インターネットの情報源の充実が印象的です。たいていの症状や病気について情報があり、標準的な治療法、実際の患者の闘病記などが手軽に読めるので、ちょっと注意してみていると、たちまち専門医に近い知識が得られます。すごい時代です。

僕の場合、目の使いすぎと、パソコンの作業などで、肩周辺の筋肉が常に同じ状態で固定していることが多いので、それによって筋肉が常に緊張状態になり、筋肉の中に老廃物である乳酸などがたまり、痛みを呼ぶ、ということがわかってきました。どうしてもわからなかったのが、肩や首のコリが、肩の痛みではなく、なぜ頭全体（といっても後頭部側が中心ですが）の痛みになるのか、という点なのですが、やはり人間の身体はつながっているのですね。と同時に、頭という部位は実に重たいところで、これを細い首と肩で支え続けるという人体の構造は、やはりかなり無理が来るのでしょう。

もともと肩が凝っているという自覚もなかったし、凝っているとしてもたいしたことがないと思っていたし、まして肩と頭痛がつながっていることさえ、実感できませんでした。そのために、そもそも肩や首のコリが原因ということを受け入れるまでにずいぶん時間がかかりました。

すこし前まで、「1か月に1回ぐらい頭痛になる」ことと、「数年ごとに腎臓結石が再発することがある」ということ以外、健康には問題を感じていなかったし、頭痛は薬を飲めば1時間で治ってしまい、肩こりの自覚もなかったので、「肩から首、頭までの慢性的なトラブル」という事実を受け入れること自体に、時間がかかったということができるかもしれません。「いくらパソコンをたたいても、肩こりしないことが自分の才能」とうそぶいていた時期もあったほどでした。

■クスリって、すごすぎ

原因がじょじょにわかってきたら、それを取り除いて頭痛を防具ことを考えなければなりません。いったん頭痛になってしまうと、身体を動かすこともつらくなるので（外見なごくふつうに見えるようですが、本人はとてもしんどい状態です）、やはり痛みが出ないように予防することが重要なのです。

ここでもテレビやインターネットの情報源にはいろいろとメッセージがあり、基本は「筋肉の緊張をほぐす」。ストレッチや運動をしなさいということになります。もともと運動嫌いですから、じゃあ何でもやろう！とはならないワケですが、忙しいこともあるし、「やるなら効果的に予防できることをやろう」と思います。散歩、ストレッチ、筋トレ、テニスなどのスポーツ、といくつかチャレンジしてみたのですが、それによって頭痛にぴたりと効くというものはなく、それ自体が楽しみになれば別ですが、頭痛の解消法としては効率が悪すぎるのです。もちろん、運動を続けること自体はやった方がいいなあと思うのですが、やり続けても、ある朝頭痛になっている自分を発見するときのむなしさは、「努力が報われない感」が漂い、よけいにつらいものがあります。それに運動をしすぎると筋肉痛になってしまい、翌日にはかえって身体を動かさない結果になったりします。肩周辺の筋肉が、運動によって確かにほぐされているという実感のわく運動も、見つかっていません。

血行をよくして頭痛解消によいというサプリメントや漢方薬もいろいろためしました。ビタミンE。次に、近所の薬局で勧められた「四川富貴廣」という、お高い漢方薬。ビタミンEは、目に見える効果がなかったのですが、「四川富貴廣」のほうは確かに改善効果がありました。いわゆる「血液さらさら」系の、健康食品にあたる薬です。規定量を飲むとコスト的につらいので、徐々に減らしつつ、これは今でも続けています。漢方薬と西洋薬の両方から処方した頭痛薬、というのも勧められて飲んでみたのですが、成分をよく見ると、痛みを抑えるのは昔からあるアスピリン。それも通常の処方以上の量が入っていて、「これでは意味がない」と思い、やめました。もちろん定番の貼り薬、塗り薬、あらゆるものをためしました。

こうした漢方薬やサプリメントは、確かに一定の効果はあるのですが、頭痛を予防する決定打ではなく、森に入りたいのに、周囲をぐるぐる回っているような状態が続きました。頭痛の頻度、症状は大きくは改善できず、「いろいろやっているのにだめだった」という徒労感の方が募ります。その中でも一番効果があったのが、マッサージです。この年になるまでマッサージなるところには行ったことがなかったので、人に身体を触られること自体、くすぐったくていやだったのですが、いざ行ってみると、痛くなってからでも効果が出るという意味では、マッサージがいちばんです。でも1回30分で2500円、それで効果が出るとは限らない現実を見ると、やはりコストパフォーマンスが悪すぎます。

■頭痛が「直った」というのはどういうこと？

こうなってみて、頭痛薬のありがたさがしみじみしてきました。1個100円にも満たないカプセルをただ飲むだけで、1時間もすれば症状を抑えてくれる薬。痛みさえ感じなくなれば、ふつうの生活が問題なく送れるので、確かに「頭痛を治す」機能をたった100円で果たしてくれていたわけです。本当にすごいことです。科学の成果に感謝せざるを得ません。

しかし痛み止めの薬は、ただ痛みを「感じなく」しているだけで、「痛みのもとをなくす」ことができたわけではありませんでした。痛みのもとは本当はどこなのか、なぜそれが解消できないのか、その模索はさらに続きました。

それでだんだんわかってきたことは、「自分の身体は確かに凝っている」という自覚です。特に肩は、頭痛があるなしにかかわらず、いつも芯が残っていることに気がついてきました。自分で肩をゆっくりもみほぐしてみると、肩胛骨の上に、10円玉を回転させて球にしたぐらいの大きさの固まりがあり、圧すと首や目の裏側まで痛くて、この固まりが頭痛の原因らしいことに気がついたのです。結局、この小さくて固いコリにすべての原因が集約されていて、これをほぐさないと頭痛からは解放されないのではないか、と感じるようになりました。

しかし、今日までのところ、この「頭痛の核」をほぐすことは、まだできていません。ただのストレッチではここを伸ばしきることは難しいし、マッサージをし続けても周囲が痛くなって「もみ返し状態」になるので、やり続けることもできない。少しずつほぐしていって、うまく解消していくのだろうか？と疑問を持ちつつも、ここに意識を集中しているところです。

■さらに、コリの原因は？

痛みの核が見つかったことは、前進なのですが、ではなぜこんなに固まっているのか？という点にも目を向けなければなりません。

最大の原因は忙しいときは1日中パソコンに向かっていることです。でも、これを減らすことはできても、やめるわけにはいきません。それに、解決策としては、パソコン使用を減らして頭痛を治すのではなく、パソコンとつきあいながら頭痛にならないようにする、と考えなければならないでしょう。

休み休み使えばいいと思うかもしれませんが、その程度の休憩はこれまでも入れていて、もし休憩で解決するなら、これまでと違う休憩の入れ方にしなければならないでしょう。

それに、もしパソコンだけが原因なら、夏休みや年末年始などで、1週間、あまりパソコンにさわらない、六兼屋の庭で庭造りで遊ぶ、という予定のときは頭痛にならないはずですが、こういう日でもちゃんと頭痛はやってくるのです。ただ休めばいい、軽い運動をすればいい、というわけではなさそうです。

もうひとつの原因は肥満です。ご多分に漏れず、僕の身体も、じょじょに脂肪がたまり、筋肉が失われて、「大人らしい」身体になってしまいました。BMI（肥満の指標）では22台なので、いちばん病気のリスクが少ないところで、実際、以前は時々あった胃痛や下痢など消化器系の症状はあまりでなくなりました。しかし、無駄な脂肪の重みが少なくなった筋肉にのしかかっているのは事実で、これがコリの原因になっているのは間違いありません。とはいえ、年齢に逆らって筋肉をつけ、脂肪を落とすのは、思ったほど簡単なことではありません。基本的に、年齢が上がることは悪いことではないと思っているのですが、筋肉と脂肪の関係だけは、つらいものがあります。

残念ながら、頭痛の原因を効果的に除く効果的な方法はまだ見つかっていません。でも、少しずつ本質に近づいている感じがするようになってきたので、こうして文章にすることもできるようになったのでしょう。

■今やっている予防策

最近、ちょっと試しているのは、「ショウガ」です。ショウガはほかの食べ物と比べて、身体を温め、血行をよくする働きが強いらしく、食事ごとに薄切りを3枚とれば、効果があるということだったので、ここ2週間ほど続けています。胃腸の調子がよくなり、けっこうはよくなった感じがするので（ダイエットの効果もあります）、もうしばらく続けてみようと思います。

ストレッチと筋トレは、寝る前の習慣として定着してきました。眠いのであまり長くできないのですが、特に筋トレ系を増やしていきたいと思っています。これも、プロテインやアミノ酸をとるなどして、効果的に筋肉を増やすことをねらった方がいいのかなーと調べているところです。

問題の「核」を小さくするマッサージは、自力で続けています。自力がいいのか、マッサージ師に頼む方がいいのか、これから試していくつもり。

血行をよくする関係のサプリメントは、少しずつ（多くなりすぎない程度に）続ける、食事に玄米や雑穀系を取り入れること、油分を減らすことなどは、まあ年齢相応にやっています。ただ、これは頭痛予防に直結することではないでしょう。

他に、これをやれば？というアドバイスがあれば、ぜひ教えてください。

■医療と薬の関係

こうして頭痛というありふれた病気と闘ってみると、現代医学が頭痛ひとつ「直す」ことができていないという事実にぶつかります。痛みを取っているだけで、頭痛の原因をはっきり特定したり、原因そのものを効果的に取り除く方法も提示できていないのです。

僕はここしばらく製薬会社のなかに入って、薬の開発プロジェクトに関係する仕事をしているのですが、医薬品の開発を見ていても、これはわかります。症状を抑えたり、落ちている機能を上げる薬は開発されているのですが、なぜ症状が出るのか、その原因を取り除いたり、なぜある数値が異常なのか（たとえば血圧が下がる、上がる）、その原因に直接作用するような薬が作られているわけではありません。

また抗生物質のように、細菌の増殖を抑える薬はあっても、こういう薬は同時に、体内で働いている、人間にとって必要な細菌もまた、抑えてしまうはずです。こういう問題も含めて効果的な薬であるとは限らないのです。

にもかかわらず、医師も患者も、薬さえ飲めば病気は簡単に治ると思いこんでいるフシがあります。現代医学は進んでいるのだから、風邪や頭痛ぐらい、医者が薬という工具を使って簡単に直るのだと。それが当然という「信仰」があるかのようです。

しかし、実際に頭痛の原因を取り除こうとすると、その日常的で小さな病気（といえないかもしれません）でさえ、試行錯誤の連続で、それでも成功がおぼつかないことに気がつきます。もっと複雑で致命的な病気なら、なおのこと難しいでしょう。

もちろん、医学も薬も、健康な暮らしにたくさんの貢献をしてくれています。頭痛薬がなければ、実際問題、仕事にならない日もあります。実にありがたいことです。しかし、医学や薬が、人間の健康を本質的に作ってくれているわけではないという理解もまた、必要な時代になっているように思います。

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渡辺パコ。ライター、デザイナー、コンサルタント、グロービス・マネジメント・スクール講師。
1960年東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒。85年採用広告プロダクションでコピーライター、クリエイティブディレクターとして広告、会社案内の制作、PR戦略の企画立案などを担当。その後、独立して90年に有限会社水族館文庫を設立。94年から著作活動を開始する一方、Webサイトの設立・運営にアドバイザーとして積極的に参画、ビジネスインキュベーションを担当。雑誌などへの執筆活動も行う。著書に「環境経営の教科書」「人生に役立つ論理力トレーニング」（幻冬舎）「＜意思伝達編＞論理力を鍛えるトレーニングブック」「論理力を鍛えるトレーニングブック」「手にとるようにIT経営がわかる本」「図解＆キーワードで読み解く通信業界」（かんき出版）、「LANの本質」、「生命保険がわかる本」など。

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