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今週は冬の六兼屋の話です。 ■雪が降らない 「今年の冬は雪が降らないよ」と家族に話していた僕の予想は大当たりで、2月中旬になるいまも、六兼屋ではほとんど雪が降っていません。単なるハッタリだったのですが、あたってよかった(^_^)。 六兼屋のある八ヶ岳の山梨県側は、もともと雪がほとんど降らない土地柄です。八ヶ岳にいると知っている友人や知人は、「寒いでしょう、雪がたくさん降ってますか?」と聞きますが、まあそれは半分社交辞令というか、ごあいさつとしても、実際このあたりは雪が少ないのです。 冬、雪が降るのは、冬に降水がある場合です。東京では降水があると、冬でもたいていは雨になります。雨と雪は、大気の活動としては同じもので、もともと雪として振ってきたものが地上付近で暖められて雨になるのです。雨になる気温がおおむね4度ぐらいといわれていて、東京では冬でも4度以上あることが多いので、雨になるわけです。しかし、それ以前に、東京では冬は降水自体がほとんどありません。日本では冬は大陸からの北西の季節風が吹きますが、この季節風は日本海を割った来るためにたっぷり水分を含んでいます。この水分が日本列島にあたり、中部山岳地帯でたっぷり雪になって振ってきます。これが北陸の豪雪のメカニズムで、北西の風が大陸から海を渡る距離が一番長い石川県から富山県あたりの山沿いが、日本でもいちばん雪の降る地域になっているわけです。 日本アルプスにぶつかって上昇気流になり、雪となって降ってしまうと、そこから先は季節風はカラカラに乾燥した状態になるので、東京まで来るときには乾燥しきった季節風になります。からっ風です。六兼屋のある八ヶ岳南麓も、北アルプスや霧ヶ峰の山で完全に水分が搾り取られた乾いた風が吹くために、雪も雨も、基本的に降らないのです。 そういうわけで、僕らが八ヶ岳の土地を探しているころは、地元の人から「このあたりは雪は降らないよ」と言われていました。それが、六兼屋ができるすこし前の冬に突然大雪になり、地元のじいさんばあさんもびっくりの(80年生きてきてはじめて、とか言うような)大雪になりました。それ以来、ここ5年ぐらいは、毎年30センチを超える積雪が一冬に数回はあり、気温が低いせいですっかり根雪になって、3月後半まで残ったりしていたのです(温暖化の影響でしょう)。 それが、今年は晴天続きで雪にはなりませんでした。おかげで、3年前に六兼屋ができてからはじめて、雪のない、日差しあふれる冬を過ごしています。 ■丸太を手に入れる そんな雪が降らない予想もあって、今年は薪(まき)割りをすることにしました。 薪は、ストーブの燃料です。六兼屋の冬の暖房は1台の小型薪ストーブに頼っているので、薪の用意は冬の生活の決め手なのです。 日本では、灯油やガス、電気のエアコンがあたりまえになったので、薪という燃料をどうやって手に入れるか、わからない人が多いのではないでしょうか。薪は、かつては灯油と同じように、燃料屋さんが持ってきてくれるものでした。燃料屋さんは、薪の他に、石炭、練炭、炭などを品揃えしていて、リクエストに応じて届けてくれたわけです。でも、もちろん買うばかりではなく、自分で木を切り、斧で割って、薪にする方法もあります。 いま、薪ストーブのオーナーの一部は、近くの林から薪をただで手に入れ、自分で割って薪にしています。農村部では薪になる樹木がけっこう切られています。開発や住宅建築のために林が切られることもあるし、畑の脇の林が大きくなり過ぎ、畑の日当たりが悪くなって切る、ということもあります。リンゴなどの果樹園をやっている農家から、剪定で切った木や枝が出ることもよくあります。木を切る仕事の人(木こり)に頼んでおいて、木を切ったタイミングで教えてもらって、軽トラックなどで駆けつけてもらってくる、というのがひとつのパターンで、薪ストーブのオーナー向けのメーリングリストでは、「○○県の××町で伐採があって、木をもらえます、必要な人はいつ取りに来てください」といった情報が飛び交っています。この方法の場合は、トラックさえ持っていれば、薪はただで手に入ります。 薪になったものを買う場合は、長さ35センチ、直径30センチぐらいの束にしたものが 1束400~500円ぐらいが相場でしょうか。消費量はけっこう多く、真冬だと1日2~3束消費するので、月に4~5万円にもなります。もっとも冬の寒さが厳しい土地だと、灯油の暖房を使っていても、2~3万円の暖房費がかかることは珍しくないので、高いなりの価値をどう考えるか次第でしょう。 六兼屋ができて今年1月でちょうど丸3年になるのですが、これまでの2シーズンは薪を買っていました。僕らの場合、六兼屋で過ごす日数は半分程度なので、薪の消費もそれほど多くないこと、薪割りをしている時間的な余裕がないことが理由です。 今年は冬のお楽しみとして薪割りをしてみたくなり、年末年、六兼屋で過ごすタイミングに合わせて、隣町の白州町の木こりさんに電話して、クヌギの丸太を2トン車いっぱい、持ってきてもらうことにしました。と書くこと自体、ちょっとびっくりかもしれませんね。日本にも「木こり」という職業の人がちゃんといます。多くはフリーランスで、土木職人のような感じで開発業者や山持ちの地主から頼まれて日当ベースで木を切るのです。木こりという意外に呼び名がないのですが、木こりというのもなんだか牧歌的にすぎるので、地元の人は「木を切る人」などと呼んだりするので妙な感じです。 ところで、木こりというと、「ハイホー」でも歌いながら斧(おの)を担いで木を切るようなイメージを持つかもしれませんが、現代の木こりは斧は使いません。チェーンソーです。このあたりは、後半で改めて。
トラックの荷台を傾けて、「ごろごろ~」と丸太が落ち、代金2万5000円を払うとあとは20~30分雑談をして、木こりさんは帰っていきました。ちなみに今回頼んだ木こりさんは僕より少し年下かなという感じの、若い渋めのお兄さんです。この量の丸太で、1.5シーズン分ぐらいの薪になるでしょうか。割ってある薪を買うよりもずっと安く手に入ります。 届いた丸太はざっと40本(×3メートル)ぐらい、太いところで40センチ、細いものは10センチというような、しっかりしたクヌギの丸太です。白州で、開発のために切られたものということでした。 ■薪割り三昧 丸太が届いたら、まず丸太を「玉切り」しなければなりません。ストーブにはいるのは35センチぐらいまでなので、30センチ前後に輪切りにしていくのです。エンジンチェーンソーに火を入れ、まずは2~3本ざくざく切ります。本当に伐採したてのクヌギらしく、玉切りすると切り口はしっとりしているし、ずっしりと重い。30センチ級の太さの丸太を30センチできると、両手でしっかり抱えてようやく持上がるぐらいです。 ざくざく玉切りしていると、チェーンソーの刃がみるみる切れなくなってきます。チェーンソーの刃は意外に弱く、1日玉切りすると、2回は「目立て」が必要です。丸い棒ヤスリで規定の場所をしゃかしゃかと磨く作業を15分ぐらいやりながら、丸太の山に登って、切り落とす作業をしばし繰り返すのです。
薪割りは、実際のところ、木と対話しているような、スピリチュアルな作業です。力一杯たたいて割るのではなく、本来割れるはずの場所にぴたっと当たると、重さで斧が落ちる程度の力でも、みごとにぱかっと割れてくれるのですね。斧を振り落とし、薪がぱかっとふたつの割れるときの快感は、他で得られる気持ちよさとは一線を画しています。スカッとするのも事実だけれど、それ以上に木の精霊と対話するような、森の意思を感じるような気持ちがしてくるのです。薪割りをするところからは木が切り出された森の上にある、甲斐駒ヶ岳がくっきりと見え、山に祈りを捧げるような気持ちになります。割れた薪が周囲に積み上がると、薪から水分が出て、ぎんなんのような甘ったるいにおいが漂います。
いくらよい斧でも、実際のところ、2キロを超える斧を振り上げ、振り下ろす作業はかなり力が必要で、数本の丸太を割っているうちに背中が汗ばみ、息が上がってきます。でもそれはジョギングの時のようなハアハアする苦しさではなく、体がじわっと内側から温まってくるときのそれなのです。実際、薪割りを1~2時間すると、肩こりや頭痛からは自然に解放されることがほとんどで、癒しを兼ねているのでしょう。 薪割りにはまるのは僕だけではありません。この冬休みは、いつも遊びに来る親友のY君と、知恵市場にも来てくれているMさんファミリーが来てくれたので、「薪割りする?」と聞いたところ、ふたりとも二つ返事で割っていきました。ふだんはビジネス最前線のMさんも、朝から夕方まで薪割りをやり続けて、見ているとどっちが六兼屋のオーナーかわからないという感じでした。 ■なぜ、薪を割るのか? ところで、ストーブに入れて燃やすなら、なぜ丸太のままで燃やさないのでしょうか? 太いものは無理としても、太さ20センチぐらいまでの丸太なら、玉切りするだけでストーブには十分入ってしまいます。 薪割りの目的は、木の乾燥にあります。切ったばかりの木には50%以上水分が含まれていて、非常に重く、この生木の状態で火をつけると、木から水分を飛ばすために熱が奪われるので、火がつきにくく、燃えにくく、部屋が暖まらないのです。薪割りをして、木の断面を空気中にさらし、太陽の日の当たるところに摘んでおくことで、じょじょに乾燥させることが目的です。玉切りのままだと、木の皮で保護されているために、1年たっても乾燥が進まないのですが、割っておくと数週間で乾燥が進み、1か月で何とか使えるようになります。まあ、実際には半年以上乾燥させた方が、よく燃える薪になるので、今年割った薪は来年使うというのが理想です。 今回は、残っていると思っていた去年の薪が思ったほど多くはなかったために、割ってから1か月ほどの乾燥で使わざるを得なかったのですが、それでも割らないよりははるかによく燃えています。
といってもあまり細かくしてしまうと、今度は乾燥した薪になったときに、あっという間に燃え尽きてしまう薪になるので、なるべく太く割っておき、じっくり乾燥させて、日持ちのする薪をつくることがポイントです。今回は、一部の薪を今シーズン使うことになったので、何割かはかなり細かく割り、ほかは大きく割って積み上げました。 ■薪に適する木 薪に適する木というは、実は意外に限られています。松や檜、杉、サワラなどの針葉樹は、薪には向きません。
鋳鉄製の薪ストーブに薪を入れ、火をつけて燃えているのを見ていると、見ているだけで心まで温かくなります。輻射熱は強く、前にはいられないほどですが、部屋全体がじっくり暖まってきます。煙突が付いているので、部屋の空気を汚さないし、燃えたCO2は再び森が吸収するので、環境的にもよい燃料です。いまのストーブは、太い薪を完璧に、手がつに燃やし尽くす工夫がされているので、木が持っている熱量の90%以上を暖房の熱として取り出すことができ、不完全燃焼もほとんどありません。東京でも使っている人がいるぐらいです(薪の置き場の確保のほうが大変)。木質燃料を燃やす暖房の暖かさ、優しさは、エアコンや温風ヒーターでは絶対に変えることはできないものです。たぶん太古の人類から引き継いだ、人間の記憶と関係しているのでしょう。 ★ ★ ★ 「薪は二度、人を暖める」と言います。一度は薪割りで、二度目はストーブで燃やされて。木を燃やす暖房は本当に暖かく、東京のマンションに戻ってくるとなんだか寒い。冬の六兼屋は、意外に暖かなところです。
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