187T 2005年は何をする？

photo by toshi.

気がついてみたら今年もあと一週間をきりましたね。いつまでたっても冬らしくならなくてちょっと調子が狂ってしまう感じもあったと思いますが、ようやく寒くなってきました。そんな今年はどんな年だったでしょうか？　来年はどんな年になりそうですか？　僕も今年の仕事はこのコミトン以外ほとんど終わり、今年を振り返りながら来年の計画を考え始めました。今回のコミトンはその話を書こうと思います。

■2004年を振り返って～こどもの誕生と子育てで何が変わった？

2004年は考えてみると「生」と接することの多い年でした。まずは二月に訪れたこどもの誕生。ただ、「新たな生命の誕生」という実感はその時も今も乏しいというのが正直なところです(^_^;。また、よく言われる「かわいくてしょうがないでしょう？」という感情ともちょっと違う。確かにかわいいとは思うし、病気とかすればもちろん心配します(この間は救急車デビュー)。欲しいと思って出来たこどもでもある。でも「目の中に入れても痛くない」とか言われる親の愛情とはちょっと違う気がします。今後、どうなるのかまだ想像がつきませんが、変化が起こり始めるとすれば彼女(女の子です)がしゃべり出したりしてコミュニケーションが成立する頃からではないかと思っています。

でも自分の中に感情の変化が全然なかったというわけではありません。それが起きたのはこどもよりもgirl friendに対してで、彼女に対するリスペクトと思いが増しました。どうしてそうなったのかを考えてみると、二つの理由があるように思います。

まず一つは彼女があれだけ大変なことにポジティブに向かい続けていたことです。つわりのしんどさに始まり、日増しに大きくなる身の重さやいろいろな痛みを十ヶ月あまりも経て出産という大仕事。その後、休む間もなく、母乳でこどもの成長を24時間支えていきます。その中でまいってくることも、もちろんありますが、根本でネガティブになることはなかった。また逆子をぎりぎりのタイミングでなおすことに成功した時の彼女の粘り、長時間に渡った出産の際の底力には並大抵ではないものがありました。

もう一つは、出産までのプロセスに関われたこと。前述のようにこどもそのものについてはあまり実感がなかったのですが、いろいろな局面でその場にいるとgirl friendの一喜一憂には実感がありました。そして僕自身が嬉しい/悲しいというよりも、彼女が喜ぶ/悲しむ、ということに共感して自分の喜怒哀楽が起きていました。たとえば逆子をなおすための施術を試しても最初うまく行かなかった時。それでももう一つトライしてみようと鎌倉まで行って成功した時。こどもの頭が見えてからも生まれるまではさらに何時間もかかっていた時。そしてその時々で僕なりの役割を果たすことが意味を持っていると感じられたので、上のように感じられたのではないかなと思います。

出産に続く子育ては、以前にコミトンに書いたように、おもしろくないとか、大変だとかあるのですが、とにかく新しいことばかりなので学べることも多い(^_^)。これまでほとんど目を向けたことのなかった、いわゆる専業主婦の世界とか、小さいこどもがいることによる生活の違いはまず興味深く感じました。そして、そういった世界の中で不便に見えたり理不尽に感じたりすることがあると、「なんとか出来ないかねえ」と考え始める自分がいます。

たとえば母乳育児を選ぶと(特にこどもが哺乳瓶を受け付けないと)母親は24時間体制で育児にあたることになります。girl friendに言わせると「自分の人間性が試される感じがする一方で、頭は働かなくなる」そう。これは何とかできないのかねえと。でも結局このことに対する解決策はまだ見つからないまま時がたって、こどもは徐々に離乳食を食べるようになってきました(^_^;。しかし他にも「世の中、こんなところを変えてみたい」「こうなったらもっとおもしろい世の中になるはず」と思うところはいろいろ出てきて、世界が広がったという感じがします。

ニンジンはgirl friendが刻んでごま油で炒めてくれたのですが、これもなかなかいいです。

■Next Life Styleへの模索-農ある生活

もう一つ「生」と関わったのが、農ある生活への一歩です。10平米の家庭菜園で初めてトライした野菜作りですが、自然農という形をとったこともあって、いろいろなものが得られました。これは予感ですが、もうこういうことを知ってしまった以上、それを全くしない生活には戻れないように思います。得られたものは、新鮮で安心な野菜はもちろんですが、それだけではありません。大きいのはやはり、生命を身近に感じられるということだと思います。

まず自分たちの生を支える野菜を、種が芽を出し、葉や茎を伸ばし、花を咲かせ、実をつけるというように順に見ていける。そこにずっと生を感じられます。そしてその環境にも生命を感じられる。ハチが飛び回っていたり、アオムシもカマキリもいたり、クモの巣が朝露に光っていたり、名前も知らない雑草が花を咲かせていたり、土も含めてみんなそこにいるものが生きて見える。そんな中で育っている作物は、時に工業製品のように見えてしまうきれいにラップされた野菜と違って、「自然」な感じがします。

しかし「自然」と言いながらおそらく、種を蒔いてほったらかしておくだけでは望むような収穫はで来ません。そこで自然な中でも、確実に、十分な収穫を得ようといろいろ知恵を絞ることになるわけですが、そこがおもしろい。特に自然農の場合、肥料を入れたり農薬を使ったりとダイレクトな策を打つのではなく、自然の力を借りながら環境を少しずつ整えていきます。それはまるで国づくりのよう。まだ一年目なので、これからが本番だと思いますが、まだまだおもしろくなりそうな予感がしています。

■学びの場-本当の変化が起きつつある？

生とは直接関係ないのですが、2004年に大きかったなあと最後に上げたいのが(The last but not the leastという感じですね)三周年を迎えた英語教室「英語のシャワー」(EShower)です。今年、特によかったと思ったのは次の二つでした。まず一つ目は、ゆっくり進んできた人たちがものすごくイイ感じになってきたこと。他の人たちが一年くらいで来るところを二年とかそれ以上かかっていて確かにゆっくりなんだけど、その人のスタート地点からすればものすごく大きな変化が見られていたり、これまでにないイイ感じになっていたりするのです。

たとえば全くといっていいほど英語を出来なかった人が、発音、表現ともにとても自然な英語を話すようになってきた。この人は受験英語も含めて参加前に英語の蓄積がほとんどなかったので、話すとか書くといったアウトプットにたどりつくのにかなり時間がかかりました。でも、いったん出てくるようになったら、日本語的発音や翻訳癖がついていないので、本当に自然な英語が出てくるのです。もちろんまだ語彙は少ないのですが、それはこれまで同様にインプットをしていけばよいだけです。

また、とにかく人前で話すのが苦手で声も出なかった人が、プレゼンを楽しんで出来るようになったというのもありました。僕が好きなのは、「性格改善」ではないということ。おとなしめではにかんだような感じは変わらない。でも聞いている方も本人も楽しめるようなプレゼンが出来ているというのがいいと思います。そして、この人たちのように楽しくゆっくり着実に来られる人を増やせるといいなあと思います。

もう一つうれしいと感じたのは、英語というよりコミュニケーションの質が高まってきていること。まずそれぞれの人の話の内容がおもしろくなってきています。自分はこう思う、こう考えるというのが出てきて、かつ練られている。そして事実を取り上げて話すにしても、その切り口がおもしろくなっている。そして、よい聞き手になって来ているということ。最初は自分が話すので精一杯で人の話を聞こうと思う余裕すらない人も多かったのです。ゲストを呼んでも自分たちが話すことを用意し過ぎてゲストの話を聞く時間がなくなってしまったり(^_^)。それが最後のクラスでは、話し手が話しやすいように相槌や突込みを入れられるようになっていました。

■2005年は～girl friendとのコラボ

さて、2005年。
まずやってみたいと思っているのはgirl friendとのコラボです。これまでも彼女にはEShower等僕の仕事を手伝ってもらったり、年間の重要なプロジェクトである旅行の計画などはいっしょに立てていました。今度は彼女が持っているネタをもっと世の中に出すことをトライしてみようかと思っています。

彼女がここ3年くらい取り組んでいるのは、日本の文化のよさやそこに見られる知恵をもっと活かしていこうということ(http://www.heartbeats.com/wasanpo/)。たとえばいけばな等に見られる「あえてシンプルにしてあとは見る人の想像力にゆだねよう」という美意識は、日本に独特なものであり、いろいろなところで活かしてみるとよいものだと思います。あるいは想像力といえば落語ではほんのちょっとした動作や小道具で歩く動作を表現したりそばを食べてみせたりしますね。こんなのも粋だと思いませんか。また、和菓子にはこれまたシンプルなデザインで、ともすると失いがちな季節感を表現しています。こういったものをもう少し意識してみることで、生活が豊かになりうるし、自分たちが持っているものを知らぬ間に失ってしまわず活かしていくことができるのでは、というわけです。

こういったことを彼女はこれまで、数人のサポーターの力を借りて、企画を考え、人を呼んで会を開き、会やその他の方法で学んだことをホームページにつづっていく、という形でやってきました。それはそれで蓄積になっているのですが、まだ成果には物足りないよう。少し離れて他のことをやってからまた戻って来ようかというのですが、それではもったいないと思うので、ちょっと僕もかんでみようという話をしています。それがどういう形になるかはまだこれから考えるところですが。

■より、らしい農ある生活へ

次に、農ある生活の二年目は、いよいよ畑という、そこそこの面積のあるところでちゃんと作物が作れるのかを試すことになります。つい先日も「あそこはまわりの畑が農薬使っているから害虫が自然農の方に流れる一方で天敵は来ない。難しいと思うよ」という話を聞いたのですが、さてどうなるか。目標は大きく、自給のめどがたつレベルの収穫を得ることです。

一方でこれは、単に作物作りというだけでなく、農ある街づくりへのリサーチや、教育の場にしていく可能性をさぐるものでもあります。これが物好きな個人のつながりだけでなく各地域に成立するには何が必要かを考えながら行くことになります。また、こどもの教育に問題意識を持って取り組んでいる人たちと、こういったことを使ってどんな教育が出来るのか話して行きたいとも思っています。

■EShower-世界各地に100人の友がいたら...

上に書いたようにだいぶいい感じになってきたと、パートナーと自画自賛しているEShowerですが、もちろんさらにパワーアップしたいポイントはあります。主に考えているのは三つです。一つは「英語をそのまま取り込む」のをもっとやりやすくすること。学校で習い長い間やってきた「訳す」という習慣はしつこいもので、退治するのは本当に大変です。皮肉なものでまじめな人ほど難しい。これを、もっと楽に捨てる方法を模索していきます。

二つ目は、ことばの習得を苦手とする人たちのサポート方法を研究すること。僕らは「ナマの英語に触れる中で自然に習得する」のがベストだと思っているのですが、この方式がうまく行くためには、学ぶ人がそこから少しずつパターンを読み取れること(帰納的学習)が必要になります。しかし、中にはこれが苦手な人もいるよう。そこで今、この人たちに対しては、タイミングを見ながら少しだけ基本法則を示すこと(=演繹的学習)を組み合わせてみようとしています。根本はナマの英語に触れて学ぶのがベストだと思うので、それを助けるような基本法則の示し方を出来ればと思っています。

三つ目は、卒業生活動のサポートです。僕らは「卒業生が世界100の地域にともだちを持っていて、そこに順番に遊びに行ける」状態をつくれたら楽しいだろうなあと思っています。しかし、海外に長続きするともだちをつくるというのは多くの人にとって簡単なことではありません。僕自身、けっこう難しいだろうなあと思います。でも、それが楽しそうだとか、こんなふうにやって出来たという刺激を受けているとやりやすくなるもの。英語力と言語を超えたコミュニケーション力を持ち始めた卒業生たちがそんな刺激をしあう場づくりのサポートも来年はやりたいと思っています。

■子育て、連れ歩きへ

おもしろくないと言い続けている子育てですが(^_^)、でも、いろいろやってみたいと思っています。一つはいろんなところにこどもを連れて行くこと。(今のところ)落ち着きのあるこどもなので、騒いで邪魔になることは普通より少なそう。旅行はもちろん、なるべくあちこち連れて行って、人に慣れさせようと思っています。実際に連れ歩いてみるとおもしろいのは、あちこちでよく話しかけられるということです。特に女性、それからおじさん。「かわいいねー」「何ヶ月？」「おとうさんによく似てるねー」時間があるとそこから話が始まったりして、これは僕らにとっていろいろな出会いにつながる可能性もありおもしろい(^_^)。さらに言えば、場所によっては小さなこどもを日ごろ見ない人がけっこういるので、向こうが新鮮な体験をしてくれるというのも意外とよいことかもしれません。

二つ目はことばの教育。日本語はもちろん、英語もどんどん入れて行きたいと思っています。まず母語を固めるべきだという説もありますが、複数の言語を日常的に使う国を見ればそこをあまり悩む必要はなさそう。必要なのは何語であれことばを大事にするということでしょう。でもことばを「教える」のではなく、ことばに触れる機会をつくってあげればよいと思っています。

最後に、これは子育てとも自分たちのライフ・デザインとも言えるところですが、二年後あたりに住む場所を探し始めたいと思っています。こどもが多様な人々と自然の中で幼児期を過ごせる場所、僕らも日本の持つ知恵を活かして住むことをいろいろ試せる場所、さらに、おとなとこどもがいっしょになって学ぶ場作りを試せる場所、そんな欲張りなことをやれる場所の候補地をさがそうと思っています。

と、こんなことを考えていますが、さてどんな年になりますか。みなさんもよいお年をお迎えください。

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Toshi/高橋俊之（たかはしとしゆき）。知恵市場代表。株式会社グロービス執行役員、グロービス・マネジメント・スクール(GMS)統括責任者を経て、2001年7月からフリーランスとして活動。知恵市場の他、使える英語を楽しく習得する「英語のシャワー」を主宰。GMSクリティカルシンキング講師もつとめる。著書・監修書に「テクノロジー・パワード・リーダーシップ」（ダイヤモンド社）、「ビジネスリーダーへのキャリアを考える技術・つくる技術」（東洋経済新報社）。

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