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前回のコミトンで今後の主な取り組みの一つとして「英語のシャワー」をあげましたが、今回は昨年秋から取り組んでいるこのプロジェクトについて書きたいと思います。「やりたいこと」を仕事やビジネスにしていく一つのリアルタイム事例として読んでもらえればと思います。

■英語のシャワーとは−こどもと同じ学び方

まず最近読み始められた方のためにちょっとだけ説明すると「英語のシャワー」とは、膨大な時間とコストをかけても英語を使いこなせるようにならない日本人が英語を使えるようになるための英語学習法です(というといかにもあやしい商品みたいですが(^_^))。僕の大学時代の恩師である酒井邦秀さんから指導された方式をベースにしていますが、一言で言うと英語をシャワーのように浴びること。これを文字と音によって行います。文字ではやさしいレベルの本からスタートして読書を続ける、音でも(日本語と英語の音の違いを体得した後)やさしいものからどんどん聞いていく。ちょうど、こどもが言葉を覚えるプロセスに非常に近いです。こうして大量の英語を浴びれば、徐々に自然な英語が体にしみこみ、結果としてアウトプット(話すこと、書くこと)も自然にできるようになる、という考え方です。これに取り組むようになったのは、日本人の世界での存在感や英語教育の悲惨な状況に何かできる一つのよいポイントではないかと思ったことがありました。より詳しくはコミトン033および043を見てみてください。

■その後どうなったか?

そして、前回コミトンにこの話を書いた12月はちょうど、酒井さんに初めての社会人向けクラスをやってもらって1ヵ月半というところで、本当に英語をできるようになるのかも、その後このプロジェクトをどういう形で展開するのかもはっきりは見えていない状態でした。で、今どうなっているのか。

まず、英語の方は着実に成果を上がっています。しかしこの話からいきなり書き始めるとなんか宣伝ぽくなるのでちょっと後回し(ということは後で書くんですが(^_^))にして、プロジェクトを進めるために何をやってきたかを書いてみます。

■パワフルなパートナー獲得−意味のあることを楽しくやりたい

起業したいろいろな人と話していると「よいパートナーを見つけることって重要だけど難しいとつくづくわかった」という話をよく聞きます。僕もその通りだと思います。そして僕の場合、知恵市場の立ち上げでは恵まれたんですが、英語のシャワーでもよいパートナーに会えたという気がしています。

ではパートナーをさがす時に何を考えたのか。まず、そもそもパートナーが必要なのかということを考えました。人が増えるほど物事はややこしくなります。特に最初のうちは一人でやった方が手っ取り早い。それでもパートナーを求めるのは、一人では出来ないか、いっしょにやったら明らかにパワーアップする場合です。今回の場合、忙しい酒井さんに講師や英語の面(いわばR&D)をずっとお願いするのは難しそうだったので、その面に特に強いパートナーを欲しいと思っていました。また性格的に、攻めと守り、動と静でいうと僕は守りで静の方なので、外に出て行く必要が多い最初の頃は攻めや動の人が欲しいと思っていました。

次にパートナー選びで気をつけたこと。まずは当然、高い能力を持っていることを条件としました。難しいのは熱意と能力が一致しないことが多いということですが、ここは両方を求めます。次に事業に関する価値観で一致していること。たとえば金儲けが重要な人、急速に拡大したい人とは、僕の側がそうじゃないのですぐいっしょにできなくなるでしょう。そして三つ目が厳しい状況でも冷静に話を出来ること。少ない人数でやっていると意見の対立もダイレクトになります。それを冷静に話が出来ないと議論しているだけで力を使い果たしてしまう。最後に「食い扶持に困っていない」こと。このプロジェクトだけで食えるはずのないことはわかっていたので、これで食えなくとも関わっていける人が必要でした。

ではそういう人をどうやって探したか。僕の場合は、新たに人をさがし求めるのではなく、自分の知り合いの中から見つけました。このやり方には、その人について割と知っているというメリットがある反面、選択肢が少なくなるとか、最悪の場合ともだちを失うことになるというデメリットがありますが、今回はメリットの方が大きかったのではないかと思っています。もちろんそのためにはネットワークを広げている必要がありますが、グロービスで仕事している頃から「何かあったらいっしょにやろうよ」と声をかけられる人のつながりはつくっていたことが役立ちました。

その結果、いっしょにやることになったのが清水泉さんという人でした。彼女自身、テレビや本から生の英語を吸収することで英語を学んでおり、ニューヨーク大学およびニューヨーク大学MBAで学ぶ中、英語の世界で生活した体験もあります。教えることについてもグロービスでの実績があり、きれがあって楽しいクラスを展開することで評判でした。またビジネスセンスも高いことは化粧品会社でのマネジメント実績や話をしている中から見えていました。さらに、金を稼ぐよりも楽しくて人の役に立てることをやりたいというのが見えたので、これはよさそうだなといっしょにやりはじめたわけです。

■教室はプレゼント??

次の課題は教室でした。11月期のクラスは貸し教室を好意価格で借りられたのですが、英語のシャワーの性格上、大量の本を必要とするのでこれを毎回持ち込むのはちょっと(かなり?)面倒でした。そこにありがたいオファーが入ってきました。グロービスで僕のクラスに参加していた大久保雄一さんから、「うちにちょっとあいているところがあるので使ってもらってもいいですよ」と言われたのです。大久保さんはちょうど自身の会社の事業拡大のため増床したのだけれども、半フロアしかいらなかったのがフロア単位でしか借りれなかったので半分余っているということでした。とても低コスト、しかも教材(800冊の本!)等も置きっぱなしでよいということだったので、これは非常に助かる話でした。さらには椅子やテーブルまで「どうせうちで使うから」と用意していただいてしまいました。

また大久保さんだけでなく他にも「うちを使ってもらってもいいですよ」というオファーをいくつかもらっていました。たとえば「宣伝にもなるので」と自社の会議室の使用をオファーしてくださったオフィス什器メーカーの方とか。どうしてそういうことが可能だったかと考えてみると、清水さんともども「こういうことをやるんだ」と言ってまわれるようなネットワークを持っていたこと、意味のあることだったらサポートしたいと思ってくれる人がたくさんいたことがあげられると思います。そしておそらく、都会にはフル活用されていないスペースがまだまだ眠っているのでは、ということも思いました。なお、ありがたいオファーの後ろには思いがけぬ付帯条件がついていることもあるのですが、そういうのがなかったのも幸いでした。

■コストゼロの集客

こうして11月期に続いて、2月期にクラス(3か月)を開催できることになりました。集客は前回同様、広告宣伝費をまったくかけず、知恵市場での案内と知り合いへの声かけ、そして11月期生からの口コミのみで行いました。前の時にウェイティングリストができるくらいだったので(ワールドカップほどではないですが(^_^))集まらない心配はしていなかったのですが、ふたをあけてみると申込はかなり多くて定員に対して3倍の倍率。かなり悩みながら受講メンバーを決めることになりました。この時のことから、次の6月期は新たな募集をかけず、応募済みの人だけにだけ案内することにします。

■顧客参加型で進む

そして2月から新たなクラスがスタートしたのですが、僕自身はちょうど4か月の旅行期間に入ってしまったので、クラスのスタートを見る前にアフリカに向けて発つことになります。優秀な清水さんにアドバイザーとして酒井さんがついていたのでだいじょうぶだろうと思っていたのもありますが、もう一つあてにしていたのは11月期受講生のサポートでした。先輩がリードすることでスムーズなテイクオフができることを期待していたのです。

特にオフィシャルにサポートをお願いした3人の人には、既に後輩に読書のアドバイスを出来るようになっていた人や英語のシャワーのコンセプトをとてもよく理解している人などがいました。もちろん全てがうまく行ったわけではなく、人が多く関わることによる混乱等、戸惑いはいくつか出ていたのですが、基本的には自分がいなくとも英語のシャワーが確実に前進していました。この間、僕自身は3週間おきに日本に帰った時にクラスに行ったり打ち合わせをし、あとは清水さんとメールでやりとりをしていました。

■これまでの成果

このようにして動いていったクラスでどういった成果が上がったのか。僕としても自分の目で見るのは初めてだったので、非常に注目していました。

■英語で読書?

まず読む力で言うと、先頭集団にあたる人たちはふれこみ通り、3か月後、ハリー・ポッターや同レベルの英語の本を読んでいます。またもともと読書好きの人やこれをきっかけに本を読むことの楽しさに気づい(てしまっ)た人は日本語の小説を楽しむような感覚でそれぞれのレベルに合った英語の本を読みつづけています。そして英語のホームページを情報収集に気軽に活用する人も出てきています。

つまり、ほとんどの人が自分が英語でものを読むとは思ってもいなかったという状況か、読むにしても辞書をひきひきだったのが、日本語のようにざーっと読むようになってきたという状況です。また初回と最終回に同レベル(とてもやさしいお話)の違う話を読んでもらって時間をはかっていたのですが、多くの人のこの時間が約半分に短くなっていました。ということは、人によって到達レベルは違うものの、このまま各人、適切なレベルの読書を続けていけばよさそうだ、と思っています。

■音はもっと何かやりたい

ま聞く力についても似たようなことが起きていました。残念ながら(^_^)3か月や半年で映画を字幕なしで見てほぼ完全に分かるというような人はいません。しかしテレビをボーっと見ていても英語が言葉として飛び込んでくるようになって驚いたとか、ラジオや映画の英語が耳に入ってくるようになった、意味はわからないけど単語のスペルが目に浮かぶようになった、というような変化が起きています。しかし音についてはさらに工夫が必要だと考えているところで、これは話す、書くのところにも関連するのでその後に触れたいと思います。

話す、書くことについては3か月間のクラスではまったくといってよいほどやりませんでした。これは「十分に英語を浴びてからでないと、受験英語でやってきた不自然な英語=日本語からの変換英語をしみつかせてしまうことになってしまう」と考えていたからです。そして今、6月からスタートした継続者用のクラスで話すこと・書くことを少しずつ始めているのですが、考えていた以上に受験英語の悪影響が大きいことを実感しています。不必要に難しい単語を、しかも間違った使い方をしてしまい、なんだかよくわからない文になってしまうのですね。それでもこの数か月で蓄積してきた「生の英語」が勝っているところでは、いい感じの英語になっている。この方向にもっと持って行きたいと思っています。

そして、話す上で、さらには書く上でも気になったのが少し上に書いた「音」でした。英語には日本語とまったく違うリズムがあります。日本語が割とフラットであるのに対して英語の音はまるで波のように強弱があり、しかも弱いところはただ弱いだけでなくスピードアップしてよけいに聞こえない傾向があります。でも言ってはいる。ということは、このリズムがつかめていないと不完全なセンテンスでしか聞こえないことになり、いくらインプットしても正しい英語を吸収できません。それで書いてもどこかおかしな英語になってしまう。一方で上のように受験英語を駆使すると別の意味でおかしくなる。仮に読むことで正しい英語を補完しても、今度は自分がしゃべった時に普通の英語とリズムが違ってしまうので相手に通じないことになります。

上で聞き取りについて書いたように、受講生は現状でも進歩しているのですが、この部分については、もっと何かできるのではないか、やりたい、と思っています。というのも上のことから、逆にいえば、英語のリズムを自分のものにしていれば、英語のラジオを聞いたり映画を観たりすることで正しい英語のシャワーをさらに高い吸収率で浴びられることになります。また変な英語を使うと、たとえば冠詞が必要なのに省いていたりするとリズムが合わなくなるので変だな、と自分で思えるようになります。というかそれは人の英語を聞いているときの話で、自分自身は正しい英語を吸収したことにより自然に冠詞が口をついて出てきてしまうのですが。というわけでここは今いろいろとトライしているところです。

■楽じゃなきゃ

最後に英語に対する感覚というところで、うれしい変化がありました。それは「英語ではなく話を読めるようになった」というコメントをいくつも見たことです。「英文解釈」という教育を受けている我々は英語を見るとともすると辞書ですべての単語を引きながらえらい時間かけて「解析」をしてしまうのですが、そうではなく普通に「読書」をしているわけです。これはうれしい。また英語学習への取り組みと言う意味でも「楽しく、楽に付き合っていこうと思うようになった」「構えなくなった」といったフィードバックが多く見られ「そうそう、そうだよ」と思ったのでした。そもそも言語はその国なら誰でも使っているものですから、苦しみながら学ぶようなものじゃないですよね。そんなふうになっているとしたら、それは学ぶ側の責任ではなく、教え方がおかしい。

と、ここまでの話を書いたらけっこう長くなってしまいました。今、何を考え、何をやろうとしているのかというところは次回に書きたいと思います。

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Toshi/高橋俊之(たかはしとしゆき)。知恵市場代表。株式会社グロービス執行役員、グロービス・マネジメント・スクール(GMS)統括責任者を経て、2001年7月からフリーランスとして活動。知恵市場の他、使える英語を楽しく習得する「英語のシャワー」を主宰。GMSクリティカルシンキング講師もつとめる。著書・監修書に「テクノロジー・パワード・リーダーシップ」(ダイヤモンド社)、「ビジネスリーダーへの キャリアを考える技術・つくる技術」(東洋経済新報社)。

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